たろぁーるの日記

たろぁーる氏が書いているぶろぐ。主にアニメとかマンガとかテレビの感想と一人言。ネタバレ結構あります。

夜明け告げるルーのうた

私は湯浅監督が好きで過去の作品も好きなものが多い。本作は初のオリジナルの映画で注目はしていたが,上映館が近くになくなかなかタイミングが合わなかった。海外の賞を取り,若干上映館が増えたのかようやく見れた。
本作,原作からオリジナルだが,ストーリ的にはジュブナイルとしての正統。日常を無気力に過ごしている少年が外からやってきた何かと出会い,心を通わせる,しかしそれにより外部との軋轢が生じる,騒ぎは大きくなり周囲を巻き込んだ大騒ぎとなる,そしてそれを打開するのに主人公が行動を起こし,そして解決,周囲との軋轢も解消し,少年は日常を肯定,出会った何かとは別れ,少年期は幕を閉じる…という内容である。ある意味初のオリジナルということでストーリ的には奇をてらわずストレートに描いたのかもしれない。その分,絵の世界は湯浅ワールド。漫画がうねうねと動き,変幻自在に形も色も変える作風。これまでの作品では暗い絵も多かったが,今回は海が舞台ということで,綺麗で透明感のある映像が多かった。
人魚が主人公で,少女の人魚なのでぽにょとの類似性をあげる人も多いようだけど,ストーリの骨子はまるで違う。音楽が鍵となり仲良くなるストーリ,町興しと祟りにうごめく大人たちの利害,そしてバケモノとして人魚などが仕掛けだろうか。人魚とは言うがここで出てくる人魚たちはバンパイヤの様である。噛み付くと相手を人魚にしてしまい不老不死になる。そして日光を浴びると燃えて死んでしまうというのはバンパイヤである。そしてそれゆえに大きな岩の壁に囲まれた日無町にだけ人魚が生息するという設定は面白いと思った。
万人に楽しめる作品になっていると思うが,湯浅ファンの自分としては,もう少し唄って踊ってるシーンを長くしてトリップ感をもっと味わえるようにして欲しかったなぁと思った。もっとミュージカルの様にしても良かったのではないか?という気もした。途中大人たちがルーを中心にいがみ合うシーンは結構人々の負の部分を描いており,見ていて辛くなったし,それに対して目を背けて逃げてしまった主人公にも共感しづらかった。この部分はもう少しさらりと描いて欲しかったが,おそらくこれも描きたかった話なんだろう。でもこの騒ぎで一番頑張ったのは,ルーでも主人公のカイでもなく遊歩ですよね。
セイレーンの演奏でルーが唄い町の人たちが踊るシーンをもっと長く観ていたい,そう思うくらい魅力ある映像。特に湯浅監督の作品を未経験の人には大いに勧めたい。良い作品だと思う。