たろぁーるの日記

たろぁーる氏が書いているぶろぐ。主にアニメとかマンガとかテレビの感想と一人言。ネタバレ結構あります。

PSYCHO-PASS 全話を通して

今期のハードボイルド枠。「絶園」が緩急織り混ぜてるのに対し,こちらは終始ハードに徹してました。いずれも作品の完成度は高いと思います。
最初始まったときに,機械による犯罪者の犯罪係数の測定と執行,それは冤罪や誤認による警察事故を完全に排除出来た「完璧な世界」のように思えました。しかし話が進んでいくにつれ,電波が届かないところじゃまともに動かなかったり*1,一度犯罪係数があがってしまうと更正ができなかったり*2と,だんだんほころびが見えてきました。
そして極めつけが犯罪係数が判定できない槙島の登場。彼の犯罪行動により明らかになる「完璧な世界」の裏っ側,仕掛け。「完璧な世界」は別に科学により人の犯罪係数を完璧に測定できるわけではなく,人の脳の集合体であるシビラシステムが恣意的に判定をしていただけだった…という世界でした。
これは,客観的事実によって人を裁いているわけではなく,単に人に変わってシステムが裁いているだけ…という意味になります。しかしそれによって個々の人達は自分達で判断をするという責から解放されます。警察は冤罪や誤認を責められることはありません。人が人を裁くという責任をシステムに押し付けた世界が「完璧な世界」だったということでしょう。
そういう意味で最終話が「完璧な世界」というタイトルだったというのは皮肉です。朱は真実を知りクソッタレだと思いましたが,彼女一人の思いで完璧な世界を壊すことは出来ません。おそらく多くの人は,自分に災厄が降り掛かってこなければ,「誰かに決めてもらう」世界に心地好さを感じているのでしょう。そういう意味では始まりの樹がもたらす世界と同じであり,同じテーマの作品が今期は二つ揃ったことになります。
現実の日本だって,国内の政治だといつまでも決まらないのに,外圧があると「仕方ないね」と物事が進んでいくわけで,これらの世界が描く世界は,そう現実と掛け離れたものでは無いのでしょう。
この作品,結局世界が変わらなかったことに対しての不満もネットで見られましたが,わたし自身は,こういう世界観だからこそ,安易にカタルシスを追うのではなく,無力感を感じることの方に作品としての良さを感じます。そういう意味では,このハードな世界観はとても好みだし,こういう作品はまた出てきて欲しい…と思いました。
ただ,この作品は犯罪の描写がえらく直接的でグロかったので,子供が見ないように,早朝に見たらすぐに消してました(苦笑)。そういう意味ではもったいなかったなぁ。

*1:他の科学に対してえらくしょぼいのだけど,結局脳がその都度判断するのでオンラインじゃないとダメってことみたい

*2:これもシステムの怠慢とか思い込みが優先されているってことだろう