たろぁーるの日記

たろぁーる氏が書いているぶろぐ。主にアニメとかマンガとかテレビの感想と一人言。ネタバレ結構あります。

新世界より 全体を通して

今期の作品でもっとも見ごたえがあった作品。原作が重厚なSF小説ということもあってか,世界設計がこれまでになかった独特なものであったことで,その世界が見えてくる事自体にカタルシスを感じた。また主人公たちが12歳から26歳という14年に渡る長い期間を描かれるということで,更に人物描写や子供の視点から大人の視点へ至る課程で見えてくるものの違いをうまく描いていたと思う。
一方で,その世界の秘密自身が物語の仕掛けになっていて,主人公らのキャラや生きざまが,世界説明の補助になっているような印象も受けたのは多少残念。まぁでもこの作品としてはこういう作りなんだろう。特に幼少時は主人公らの記憶が改竄されることもあり,彼らがただ世界に翻弄されているだけのようにも見えた。
序盤のしかけがクライマックスに向けて徐々に表層化するようになっている事もあり,前半は何が起きているのか,観てる方もわからず困惑していたというのが正直なところだが,それ自体も仕掛けなんでしょう。ただ脱落した人は多かったのではないだろうか。わたし自身は序盤は呪力を持つ人間社会を描く話だと思っていたので後半に入ってバケネズミが反乱を起こす話になったというのは驚いた。というか最初の数話はどうしてバケネズミみたいなキャラを出すのだろう…とすら思っていた。ただ,バケネズミが呪力を持たない人間だろう…というのはむしろ最初の時から思っていたので,最終回のオチには全く驚かなかった。
感想の中で何度か書いたが,反乱を起こしてからの流れは,呪力を持つ人間側が支配層であり,通常であれば反乱側に共感するのが普通のもの語りではないか?という気がする。忘却の旋律であれば,この作品の「人間」は「モンスター」であり,スクィーラは「メロスの戦士」ということになる。そして圧政を敷きながらも,それを意識せず,むしろ神々同士の牽制をしあってるのが,この作品に描かれている人間であった。バケネズミは呪力を持たない人間を殺すことにキシ機構が働かないようにするために姿形を変えられたわけだが,視聴者がこの作品の終盤で最後までバケネズミではなく,人間側を応援していたのであれば,我々には,姿形が異るものを殺すのには痛みを感じない…という本能が備わっていて,誰にでもキシ機構は備わっているといえるだろう。
見ていて爽快感は無いのだが,いろいろ考えさせられてとても良い作品だったと思う。おもしろい世界観なので,同じ世界で他の人や時代を描いた話が幾らでもつくれそうだが,そういうのはないのかな。
いずれにせよお疲れ様でした。