海に村があり人が住んでいる。そして地上に通い,子供たちは取り残される…という設定は私は最後まで違和感があり,なぜこういう話にしたんだろう…とは思っているけど,単なる舞台装置であり,お話自体は,いがみ合う二つの村と,そこを越えて惹かれあうこと,そして時を越えて,人を思うことと,年齢の差を埋めること,複雑な三角関係…などを描いていたように思います。
子供たちの相手を想う気持ちの描き方が秀逸で,胸が苦しくなるようなシーンがいくつもありました。冬眠前は,海村の子供たちが,仲良し組からお互いを異性と意識する年代になり,その関係に危うさが見え始める。そして地上の男の介入により,物事が急激に進み始める…という流れだった。ここまでは割りと凡庸な少年少女の三角関係モノ(「あの花」とか…)に思えていて,海村の設定が浮いている感じがしたんですが,冬眠から目覚め美海がこの関係に割って入ってからはこの舞台装置が有効に機能していた気がします。
ただ後半,話を中心としてドライブしていた美海が光とまなかに割って入ることが出来ず,妹の様な存在で残ったことは,残酷な結末のようにも思えたのですが,そんなものかもしれない…という気もしました。一方で美海と紡,そして何故か晃までがエナを得たというのは,これまで海と陸の人たちが結ばれると海から追い出されていたのが,逆に海側も彼らを祝福するようになった…ということを描いていたのでしょうか。
結局美海が行ったことは,海と陸の和解だったのでしょうか。彼女自身は光のために行動をしていたのですが,結果的に,その想いは報われず,しかし海と陸の人たちを救ったということなのかもしれません。
地上と海に異常気象という大きな危機が訪れているのに,家族以外の大人は,大学の先生,学校の先生だけで,ほとんど描かれることもなく,村の外が描かれたのも一度っきりという徹底した子供たち中心に描かれてました。その辺も含めて非常にファンタジー的な要素が強いと感じてましたが,その分登場人物の心の動きを丁寧に描かれていたところが,この作品のキモだった気がします。
余談ですが,海の作画がすばらしく綺麗でした。あと目が大きすぎるキャラデザは子供っぽすぎて好みではないのですが,この作品では,海村の子供たちの目の色が水色に統一されており,目で感情が描かれるシーンも多く,意味があるな…と感じておりました。
スタッフの皆様お疲れ様でした。