たろぁーるの日記

たろぁーる氏が書いているぶろぐ。主にアニメとかマンガとかテレビの感想と一人言。ネタバレ結構あります。

「戦時下」のおたく(ササキバラ・ゴウ編)(isbn:4048839292)

  • そういえば,このページに[書評]という形で書くのは初めてです。

9.11以来アメリカは戦時下であり,それに協力している日本もまた戦時下である。ましてやアメリカの要求を拒めない日本は「戦後」ですらあるのかもしれない。しかしそういう事実を意識させる作品を作り続けてるのは映画や小説よりむしろマンガやアニメというサブカルチャーである…っていう感じの切口で始まったこの本。実際はComic新現実とかに書かれた批評等を再構成したもので書き下しの文章はほとんどありません。わたしはComic新現実忘却の旋律について書かれた評論を読んで気に入っていたので買いました。ちなみに忘却の旋律はここ数年わたしがみたアニメの中で一番気に入ってる作品です。
他にも池上遼一がかって作品の中で極端な意見として書いたセリフを現実の若手議員が発言思想なこの現実の状況を指摘したりして,鋭いところも結構ありました。
とはいえ,この本,そういう一部の作品を称賛する一方で,イノセンスとかジブリアニメをケチョンケチョンに書いていて,ちょっと眉をしかめてしまうところもあります。まぁ毒がある文章は笑いが入っていたら,おもしろい場合もあるのですが,逆に毒をはいている人に薄さを感じてしまうと,かなり滑稽に感じてしまう…と。まぁ本にしてるだけ責任を背負うつもりはあるのでしょうけど…。
気になったのはつい最近とあるところに「テクノ」について書いた通り,テクノってかなり複雑なジャンルなのに*1,どうもこの本で指摘されているテクノはイコールYMOであること。まぁ本人達が,それを好きなのは構わないのですが,他の人がテクノと言ってるのをYMOと誤解して(明確にそうかいてないのですが,古い音楽って思ってるところからそんな気がする)指摘するのは,かえって自分の了見の狭さを示しているような…。
まぁそれはいいとして,香山リカの弟と対談してる文があって,えぇー香山リカってそういう人だったんだ…と思ったり*2,そこで新人類を失笑していて,確かに新人類ってなんだったんだ?…バブルと一緒に滅んだよなぁ…と思ったり,この対談,実は結構かなりオタクにとっては痛いのですが,その痛い分を含めてこちらはおもしろかったです。
まぁオタクが語るとたいてい痛いのですが,痛いまま本にしてるって意味じゃおもしろいし,でもその痛さを共感できるわたしもオタクなんだろうなぁ…と思うような本でした。オタクじゃ無い人が読んでも全然わからないかもしれませんが(^^;)…。

*1:「テクノ」というジャンルの複雑さは,はてなキーワードのテクノを観ても多少はわかると思いますが

*2:こちらは単なるわたしの不勉強…