たろぁーるの日記

たろぁーる氏が書いているぶろぐ。主にアニメとかマンガとかテレビの感想と一人言。ネタバレ結構あります。

ストーリー(ISBN:4776791188)/戸田誠二

戸田誠二というとコンプレックス・プールというWebサイト( http://www2.odn.ne.jp/~cbh42840/ )でご自身のマンガを発表している人で,このサイトは本の出版前から読んでいたが,おもしろい…と思っていたら,案の定出版された。そのサイトから選ばれ加筆してだした前作,前々作から半年あまりの出版だったため,実は本屋でこの新刊を見たときは「えっ?,もう三冊目が出たの?」と思ってびっくりした。だが内容を観るとWebサイトからの転載ではなく,連載中の作品だそうだ。そう戸田誠二氏は現在はWebで作品を発表するマンガかではなく,雑誌に連載しているプロの漫画家になっていた(というのはあとがきでしりました^^;)。
Webの作品はかなりたくさんあるが,どれだけの期間で描いたものか不明だったがめ,今回の作品の初出をみたら30ページあまりの作品をコンスタントに毎月掲載していることが意外だったりしたのだが,単行本に載っている5本の作品は,いずれも氏特有の味があるいい作品であるため(偉そうですが)安心しました。
とはいえ,5本の作品,主人公の年齢,性別は異るものの基本的に同じような話のようにもとれました。基本的に氏の作品全般に言えるのかも知れませんが,氏の作品の主人公はいずれもかなり自意識が強い。そしてその自意識故に「自分は何なのか?」または「自分の人生は何だったのか?」という様な悩みに陥り,そしてクライマックスで何か大きな展開があって終わる。展開があるので,自意識に潰されるようなこともないのだけど,完全に昇華されることもなく,軟着陸するような,ある場合はあきらめだったり,ある部分は決心だったりするのだけど,そういう終わり方をしている気がします。
ただ,5本が同じ構造を持っているからといって,ワンパターンというわけではなく,それらの主人公が持つ悩みは,一般性の高いものなので,いずれの悩みも読んでいる人の身に覚えがあることのようにリアルです(すくなくともわたしはそう)。特に今回の作品の表題作で,主人公の男性が奥さんにも恵まれているにも関わらず,女性に対してある種の劣等感を感じるのは,わたし自身も「男性は子供つくれないので,たいした価値がないので,仕方ないので社会をつくった」と思ってるクチなので,かなり深刻に共感できた。ただ,わたしの場合,あそこまで仕事が辛くないので,ああいうことにはならないのだけど…。
いずれの結末においてもなんとか主人公が軟着陸してるのは,氏の人としての優しさだと思う。本来なら自殺したり発狂したりしそうなところまで自意識を高めた先の結末なので,そう思う。なので,逆に話のバリエーションを増やそうと,これを悲劇で終わらせたら,かなり読むのが辛い作品になるのではないだろうか?。そういう意味では,読んでいて苦しいが,この程度にしておいていただいて,結構助かってはいる(笑)。
前作までの2冊は1ページものもあったりして,少ないページで切れる作品があったりしたが,さすがに今回はそういうのはない。そういう作品はそういう作品でまた描いて欲しいのであるが,こういう作品って描いている方も結構辛いのだろうなぁ…と想像するので,じっくりと描いてくれた方がいいのかなぁ…とも思いました。
いずれにせよ,戸田誠二氏の次の作品も期待しております。